サーモスタット交換(2000年10月) W124 - No.20
W124 - No.19 W124 - No.21

紅葉も終わり、朝晩の寒さが身にしみるようになってきました。
寒くて長い、北海道の冬が少しずつ近づいています。
その頃、トラブルは発生しました。

ある朝の、通勤途中です。ふと、水温計を見て、「オオッ」と思いました。

針がいつもの場所より、だいぶ上を指しています。いままで、こんなに上の場所を指すことはありませんでした。
計器を信じれば、「オーバーヒートに近い」ということになります。家から出て、まだ4〜5分ほどしか走っていません。エンジンは充分暖まっていないはずだから、この場合のオーバーヒートとは、水が全く循環していないのでしょうか?

とりあえず車を路肩に寄せ、エンジンルームをのぞき込みます。
エンジンはいつもと同じように回っています。音も回り方も普段通りです。ラジエーターのアッパーホース(エンジンからラジエーターに行く水路)周辺をさわってみても、特に過熱しているふうでもないです。

とにかく、水温計の指針が尋常ではありません。トラブル発生です。
おおざっぱに2つのトラブルが考えられます。
まず第一に水温計の故障。
水温は正常だけれども、それを表す計器の方が間違っている可能性です。

第二に、本当に水温が上がっている場合。
サーモスタットが固着して、うまく冷却水路に流れていない場合。それともヘッドガスケットが吹き抜けてしまって、シリンダーの圧力が水路にリーク、冷却水路がうまく流れていないのでしょうか?

第一の原因、つまり計器の故障だったら、エンジンの動作は正常です。
エンジンの動作は正常で、それを表す水温計の針が狂っているだけだったら、そのまま運転を続けても問題がありません。
しかし、本当に水温が上がっているのだったら、直ちに運転をやめてエンジンを冷やさなければなりません。
そのまま運転して、オーバーヒートになれば、エンジンに深刻なダメージを与える恐れがあるからです。

出勤途中ですが、自宅に戻ろうかと思いました。

しかし、まてよ・・
ヒーターからの温風の具合を、確かめます。
いつもは、始動直後から少しずつ温風が出始め、完全に暖機すると熱い熱風が出ますが、どうもそこまでは、いっていないようです。
ヒーターからの温風の温度は、始動後4〜5分にしては順当のもの。特別熱いとも冷たいとも感じません。
以前、BMW635CSiでガスケットの吹き抜けを経験したことがあります。その時、オーバーヒートにもかかわらず、全く温風が出なかったことを思い出しました。

色々考えると、水温計の針以外、異常は感じられないのです。そこで、「第一の原因・計器類の故障」に心は傾いていきました。
自宅に引き返すことをやめて、そのまま運転続行です。それでも、ヒヤヒヤしながら、水温計の針ばかり気にしています。

エンジンの調子は、いつもと全く同じです。それでも、なぜか針はいつもよりずっと上を指しています。エンジンを吹かして、冷却水路の水圧を上げてみます。ウォーターポンプの回転が上がるから、水路の水が早く循環するはずです。それでも、変化無し。

しばらく走って、市街地をぬけます。そして、水温計を見ると・・・
あら不思議。針は、いつもの場所です。今までの心配がウソのように、水温計の針はいつもの場所です。


水温計の針は、いつもはこのあたりです。(撮影は2001年5月。ブレーキパッド残量警告が点灯中) Normally Water Temperature

そのまま40km走り、職場に到着。

その日は「原因はなんだろう?」と、考えてばかりいました。
帰りは問題なし。この時も、水温計の針はいつもの場所です。朝のトラブルは一体何だったのでしょうか?

その日は狐につままれた気持ちで、次の日の朝を迎えます。

そして次の日。朝一番はエンジンが冷え切っています。水温計を注意深く観察しながら発進です。
すると・・
出ました出ました。昨日と全く同じです。エンジンが暖まるにつれて、ぐんぐん水温計の針が上がっていきます。針が上がりきって、「オーバーヒート寸前か」という時に、定位置に落ち着きます。

これは一体どういうことでしょうか?その日も、仕事が終わってからの帰り道は正常。
そしてその次の日の朝も、全く同じ事が起こります。

考えてみると、この症状は早朝の寒い時にだけに起こります。一体どこに問題があるのでしょうか?
水温の調整がうまくいかない原因で、一番に考えられるのがサーモスタットです。
そもそも、サーモスタットはエンジン内部の冷却水の温度を調節する部品で、簡単には「冷却水の流量を調節する弁」と言っていいでしょう。

エンジンが始動して運転を続けると、エンジン内部の冷却水の温度が上がっていきます。そのままでは熱くなりすぎるので、やがて冷却水の一部をラジエーターへとまわして、ラジエーターで冷やすのです。
サーモスタットは元々は閉じているのですが、冷却水の温度が上がると弁が開き、ラジエーターからの冷えた水をエンジン内部に取り込みます。ラジエーターから冷えた水を多く取り込めば水温は下がるし、水をストップすれば水温は上がります。
過熱(オーバーヒート)になっても過冷(オーバークール)になってもまずいわけですから、サーモスタットは常に適正にラジエーターからの水の循環量を調節しているわけです。

そこで、私が導き出した原因とは・・
「サーモスタット不良。サーモスタットの動きが渋いに違いない。それも朝一番だけ。朝は水温上昇にサーモスタットの開閉がついてゆけない。一度動けば、問題なく動く」
おそらく、「原因はこれに違いない!!」と思いました。(思いこみました)

さて、急ぎの修理なので、部品はヤナセに注文です。毎日の通勤に使っているので、個人輸入しているひまはありません。
さすがにヤナセは対応が早いです。地方のヤナセで小さい工場です。部品の在庫は殆どありませんが、航空便で送って来るので翌日か翌々日には届いています。

ヤナセに部品を取りに行き、早速部品の交換です。サーモスタットの場所を探します。
ラジエーターで冷やされた冷却水がエンジンに入る所(ラジエーターのロワーホース)、そのあたりにありそうです。

Thermostat Housing この膨らみ、となりにあるのは、水温計のセンサーではないでしょうか。(写真では中央、レベルゲージの左、エキゾーストマニホールド下の方です)

ところで、話は変わりますが、旧式のエンジン(ニッサンL型など)では、エンジンの出口(ラジエータに行くアッパーホース取付部)にサーモスタットがついています。
しかし、ドイツ車はかなり古くからエンジン入口にサーモスタットがついています。
このサーモスタットの場所の違いは、一体何を意味するものでしょうか。

サーモスタットの場所がエンジンの入口であれば「入口制御」、出口であれば「出口制御」と呼ぶことにします。
どちらが優れているかといえば、間違いなく「入口制御」でしょう。
日本車では元々「出口制御」でしたが、昭和55年、トヨタ1Gエンジンあたりから、「入口制御」に進化しているようです。
プロは「ボトムバイパス」「インラインバイパス」と区別するようです。

「入口制御」の場合、閉じていたサーモスタットが開きラジエーターからの冷たい水で水温が適温になると、すぐにサーモスタットが閉じます。そしてちょっと高温になると少し開く・・このように可変という感じで、水温が制御されているようです。
以前BMWで、デジタルの水温計を装着し、水温をモニターしたことがありました。実に見事に水温が制御されており、常に1℃か2℃の範囲内で変動していました。

対して、「出口制御」は水温制御という点では悲惨です。例えばマイナス20℃の朝、エンジンが暖まりサーモスタットが開くと、マイナス20℃の冷却水がどっとエンジンブロックに入ってきます。
エンジンが冷えても、水の供給は止まりません。その水がシリンダー間を通ってサーモスタットに到達した時(少しは暖まっていますが)、やっとサーモスタットが閉じてマイナス20℃の水の供給が止まるわけです。
このように「出口制御」の場合、供給される冷却水の温度は、細やかな調節がされていません。その結果、エンジンブロックが大きな熱膨張・収縮を繰り返しながら、やっと定常状態に落ち着いていくようです。

「入口制御」の場合、ヒーターの効き始めも良いようで、ベンツの場合、素晴らしくヒーターの効き始めが早いです。

話がだいぶずれましたので、作業の話に戻りましょう。
早速、サーモスタットケースと思われる部品を取ります。ラジエーター・ロワーホースがつながっています。

作業するのにターボチャージャーへの吸入ダクトが邪魔なので、一回外して、違う方向に向けます。
作業しづらいですが、上下2本のボルトを外します。
Turbo Charger Inlet Duct Removed

Thermostat すると、サーモスタットケースが取れて、中からサーモスタットが出てきました。ヤッタ、にんまりです。

新旧サーモスタットを並べると、外観上の違いはありません。古い方がちょっとくすんでいて、新品の光沢が無いだけです。 New and Old

Boiling in a Pot 二つのサーモスタットを鍋に入れて、弁の開き具合を比べてみました。

左(最初)

右(煮たって、弁が開いている) Boiled Thermostat

すると、期待に反して、全く同じような動きです。(この時、イヤな予感がしました)
「微妙な動きが違うのかもしれないな」と思って、新品のサーモスタットを組みつけました。

元通り組みつけ、クーラント(冷却水)を補充して、修理完了です。

さあ、次の朝、出勤が楽しみです。ワクワクしながらしゅっぱーつ!

水温計の動きを注視します。
やがて・・・(無言)
修理前と全く変わりません (T_T)

やがて、水温計の針はいつもの場所に・・
これは、もう間違いなく、水温は正常です。

それじゃ、不具合の原因は水温計でしょうか?どうして、最初だけ水温計の針が不安定なのでしょうか?

タコメーターが死んだままなので、インパネは分解しやすいように、浮かせたままでした。その裏に指をつっこみ、コネクターをゆすってみます。
すると、接触不良のようで、針が踊ったり、正規の場所になったり・・

ナント、原因はこれでした。
でも、どうして朝一番にこの症状が出るのでしょうか。推測するに、室内が冷え切っていると、針が不安定なのです。室内が一度暖まれば、この接触不良が起こりません。
室内が暖まって、配線や基板が膨張すれば、正常に戻るみたいです。
それ以来、針がおかしな所にあると、配線を指でゆすり、正規の場所にしています。なんだか、ちゃんと修理する意欲を失ってしましました。(笑)

修理のまとめ
症状:水温計の針が上がり、びっくりさせる。
原因:水温計裏の接触不良
対策:針がおかしいときは、水温計裏の基板をさわって(ゆすって)本当の水温を知る(笑)

なんとお騒がせトラブルでしたが、今回の反省点は、修理に早合点は禁物ということです。早合点でサーモスタット交換は、全くの無駄骨となったのでした。

Sunflower in Autumn 通勤途中。道路わきの草も枯れて茶色になってきました。
思いがけなく、季節はずれのひまわり畑です。ちょっと車を止めて撮影です。

W124 - No.19 W124 - No.21
TopPage